天平庵と万葉集

天平庵のこだわり - 天平庵と万葉集

和菓子は日本の歴史や伝統をいまに伝える五感の芸術であると称され、特に聴覚の要素である菓銘は、一層の味わいと風情を高めるものです。
日本最古の歌集・万葉集は花鳥風月や自然の風物などの清雅な日本的感性のものが多く詠われています。現代の日本人の心にも響く万葉集より、できる限り菓銘を付けたいと思います。

万葉集にちなんだ菓銘

〈大和三山〉香具山は 畝傍ををしと耳梨と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古(いにしへ)も 然(しか)にあれこそ うつせみも 妻を 争ふらしき,中大兄皇子(巻1-13),詳しい説明や意味を見る 詳しい説明や意味を見る

意味

香具山は畝傍山をいとおしいと耳梨山と争った。神代の頃からもこうであったし、昔もそうであった。だからこそ今の世も妻を争っているらしい。

説明

有名な中大兄皇子の三山妻争いの歌です。3つの山の絶妙な位置関係が醸し出す情景は人々の心をとらえ、古くから人々に愛され、さまざまな思いを重ね合わせました。
694年、大和三山に囲まれた中に日本最初の本格的な都、藤原京が作られました。唐の長安城をまね、条坊制を取り入れた本格的な都であり、平城京遷都までの間、持統・文武・元明天皇の三代の天皇在籍中の都として、古代政治・文化の中心として繁栄しました。
古代大和の象徴である「大和三山」のように、人々の心を魅了し、これより何十年もの月日が流れても、人々に愛され続けますように、と願いを込め、天平庵の代表銘菓であるみかさに「大和三山」と名づけました。

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〈月の舟〉天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ,柿本人麻呂(巻7-1068),詳しい説明や意味を見る 詳しい説明や意味を見る

意味

天上の海には、雲の波が立っていて、月の舟が星の林に漕いで隠れて行くのが見える。

説明

柿本人麻呂が夜空を海、月を舟、そして一面に輝く星を林に見立てた詠んだ歌です。1300年もの昔に詠まれた歌ですが、そんな時代に詠まれたとは思えないほど私たちの心に響いてきます。今も昔も変わらぬ夜空なのでしょう。
万葉の時代、自分と大切な人を結ぶものとして歌われた月の舟。いつの時代も人と人との縁は大切なものです。天平庵とお客様を結び、お客様とお客様にとって大切な縁を結ぶ、そんなお菓子になってほしいという願いを込め、「月の舟」を創り上げました。

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〈明日香川〉明日香川 明日も渡らむ 石橋の 遠き心は 思ほえむかも(巻11-2701),詳しい説明や意味を見る 詳しい説明や意味を見る

意味

明日香川を明日にも渡ろう。遠い先の見通しなど、思いもよらない。

説明

大切な人のところへ行きたい思いを素直に詠んだ歌です。
万葉の時代、都と同じ名前、飛鳥を象徴する川としてともに生活し、感情を託した明日香川。天平庵は自家製の甘納豆を寒天の入った蜜で固め、表面を乾燥させた琥珀糖で、明日香川の情景を表現しました。
いにしえの頃より人々に愛され、長い年月を経た今も尚、その清らかな流れで私たちを優しく見守っている明日香川のように、いつまでも皆様のおそばで愛され続けるお菓子になりますように願いを込めてお作りしています。

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〈百重〉我が恋は 夜昼わかず 百重なす 心し思へば いたもすべなし(巻12-2902),詳しい説明や意味を見る 詳しい説明や意味を見る

意味

わたしの恋は、夜昼の別もない。幾重にも心に思うので、どうすることもできない。

説明

大切な人を想う気持ちを詠んだ歌です。
万葉の時代、素敵な人に巡り合うと、その人への想いを歌に込めて表現しました。千年たった今も、表現の仕方は変わりましたが、大切な人を想う気持ちに変わりありません。
天平庵はたくさんの素敵な出会いを重ねてほしいという願いを込め、一層一層丁寧に焼き上げたバウムクーヘンに「百重」と名づけました。新鮮な卵をたっぷり使用し、しっとりふんわりとやさしい口どけになるよう、真心込めて焼き上げています。

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〈山吹〉山吹の 花の盛りに かくのごとく 君を見まくは 千年にもがも(巻20-4304),詳しい説明や意味を見る 詳しい説明や意味を見る

意味

山吹の花の盛りにこのように君にお逢いすることは、千年も続いてほしいものです。

説明

大伴家持が宴の席で美しく咲いた山吹を見ながら詠んだ歌です。
山吹は春も盛りを過ぎようとする頃、山陰や水のほとりを美しく金色の花で彩ります。その山吹の花が美しく咲く情景を、白餡に爽やかな香りのオレンジジャムを入れた焼き饅頭で表現し、「山吹」と名づけました。
大伴家持が詠んだ歌のように、皆様と天平庵の出会いがいつまでも続いて欲しいという願いを込めて焼き上げています。

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〈小夜の舟〉青波に 袖さへ濡れて 漕ぐ舟の かし振るほとに さ夜ふけなむか,大伴家持(巻20-4313),詳しい説明や意味を見る 詳しい説明や意味を見る

意味

天の川の青い波に、袖まで濡らしながら漕いでゆく・・・。この舟を繋ぐ杭を打ち込んでいる間に夜はすっかり更けてしまうだろうか。

説明

大伴家持が恋しい人の元に急ぐ情景を詠んだ歌です。
万葉の時代、恋しい人に逢えるのは月夜だけだったと言われています。月明かりを頼りに大切な人のもとへ急ぐ舟の美しい情景を思い浮かべて創ったお菓子に「小夜の舟」と名づけました。恋しい人のためならば、どんなに遠くとも、どんなに時間がかかろうとも、胸を焦がしながら出掛けたのだろうと思い、金色に輝く香ばしいゴマ入りの舟型タルトにアーモンド生地を流し、しっとり焼き上げました。大切な人への想いに見立て、アーモンド生地の中に小豆を忍ばせています。
普段、なかなか伝えられない素直な想いを、アーモンドの優しい香りでお包みし、大切な人へお届けできるお菓子になってほしいという願いを込めてお作りしています。

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〈かぐはし〉梅の花 香をかぐはしみ 遠けれども 心もしのに 君をしそ思う(巻20-4500),詳しい説明や意味を見る 詳しい説明や意味を見る

意味

梅の花の香りが慕わしさに遠く離れていますが、心は絶えずあなたを思っております。

説明

市原王が梅の花の香りを詠んだ歌ですが、古代では「かぐ」は「輝く」の意味で、香りあふれる最高の美をあらわしました。
天平庵は香り豊かな酒粕を練り込んだ生地に、小豆の粒の入った白餡を包みしっとり焼き上げた香り豊かな焼き饅頭に「かぐはし」と名づけました。
市原王が遠く離れた恋しい人を慕ったように、皆様に出会える日を心待ちに、真心込めてお作りしております。

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